口の中の水分が減るだけでなく、緊張した時の唾液がひどくネバネバしているのにもはっきりとした科学的な理由があります。実は私たちの口の中には、主に三つの大きな唾液腺が存在し、それぞれ全く異なる性質の唾液を作り出しています。耳の下にある耳下腺からは、水分をたっぷりと含んだサラサラの唾液が分泌されます。一方、顎の下にある顎下腺や舌の下にある舌下腺からは、粘り気の強いネバネバとした唾液が分泌されるという明確な役割分担があるのです。
家でリラックスして食事をしている時などは副交感神経が優位に働き、耳下腺からサラサラの唾液が大量に放出されて食べ物の消化を大いに助けてくれます。しかし、緊張して交感神経が強く働くと、このサラサラ唾液の分泌がピタリと止まってしまいます。その代わりに、交感神経の強い刺激を受けた顎下腺や舌下腺から、ネバネバした少量の唾液だけが絞り出されるように分泌される仕組みになっているのです。
水のようなサラサラの成分が極端に減少し、ネバネバの成分だけが口の中に残ってしまうため、私たちは口の中が糊で張り付いたような強烈な不快感や渇きを感じてしまいます。同じ唾液という液体であっても、自律神経のどちらが命令を下すかによって、働く唾液腺の場所も液体の成分も全く異なるという人体の興味深いメカニズムが隠されているのです。
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