カタツムリの殻が持つ、水を表面に広げて汚れを浮かせて落とすというスネイル効果のメカニズムは、私たち人間の生活を豊かにするための最先端技術としてすでに応用されています。このように、生物が長い進化の過程で獲得した優れた構造や機能を人間の工業製品や技術に真似て取り入れる科学技術の分野を、バイオミメティクスあるいは生物模倣技術と呼びます。
カタツムリの親水性の仕組みが最も劇的な効果を発揮しているのが、住宅やビルなどの外壁に使用される建築材料の分野です。かつての建物の外壁は、車の排気ガスや空気中のチリなどの油分を含んだ黒い汚れが少しずつ蓄積し、数年も経つと黒ずんで見栄えが悪くなってしまうのが大きな悩みでした。しかし、カタツムリの殻の微細な凹凸構造をミクロのレベルで模倣し、特殊な親水性コーティングを施した外壁タイルや塗料が開発されたことで、この状況は一変しました。
この画期的な親水性タイルを外壁に採用すると、空気中の水分を吸収して壁の表面に常に薄い水の膜が形成されます。そして、外壁に排気ガスなどのしつこい油汚れが付着しても、その下にある水の膜が汚れの定着を防ぎます。まとまった雨が降るたびに、雨水が汚れと壁の間に入り込んで、汚れを根こそぎ浮かせて洗い流してくれるのです。人間がわざわざ高い足場を組んで掃除をしなくても、自然の雨の力だけでいつまでも美しい外観を保ち続けることができる素晴らしい技術です。
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